樹木を守る活動|ツリークライミング|環境教育ネットワークたねのもり
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ツリークライミング

環境教育ネットワークたねのもり

環境教育ネットワーク【たねのもり】の活動記録です。樹木と触れ合い、自然と心を通わせる「ツリークライミング」Rをはじめ、様々な野外活動やワークショップを通した体験型の環境教育を進めています。次世代の人材育成に努めます。

樹木を守る活動



 大自然の樹木とふれあい、友達になり、人が元気になるのはいいことだと思うが、そのために樹木や森を傷めてしまうのでは本末転倒だ。
 森林利用は、自然を自分達の都合だけで利用するのではなく、守る活動とセットで広げていくことが基本だと思う。そうでないと、継続的な資源としての価値は薄れる一方であろうし、そのような独りよがりな活動に理解を示してもらうことは不可能だからだ。
 多くの人が関わり、それぞれに思いを持つ森や樹木を利用するということは、すなわちどのように自然を守ろうとしているかを理解してもらうことに尽きると思う。
 
 樹木を守る方法は簡単なようで簡単ではない。
 素人が安易に考えた場合、複雑な要素に多様な症状が起こり判断が難しいだけでなく、それに起因して良かれと思って処置したことが、実はよくないことである場合も少なくはないと思われる。
 木を守る活動の一番の条件は、木を知りたいという気持ちのように思う。今回、講師をお願いした樹木医の皆から、一番強く伝わってきたことも、樹木を守るためのモチベーション、つまり樹木への愛情だった。

ツリークライミング木
 今回講師をお願いした千葉の樹木医の柏崎さん。いつも千葉のツリークライミングベントなどでも、「いいよいいよ」となんでも気軽に手伝ってくださる気のいい方だ。私が車で千葉から埼玉へ帰る際にも、何度も混雑を心配してメールをくださったり、早いルートを検索してくださったり細かい気配りに驚かされた。木に優しい人は人にも優しい。

 今回の木を守る講習の企画も、千葉市原の森で、柏崎さんが山武杉の溝腐れ病の話をして下さったことがきっかけとなっている。市原の森を二人で散策する機会があったのだが、このときも柏崎さんは木のことを話し始めると止まらなかった。樹木医である柏崎さんの情熱が、たねのもりのメンバーにすこしでも共有できたら、という願いで生まれたのが発端であった。

ツリークライミング樹木医
 「ほとんどの原因は根にある」と柏崎さんは言う。
 いろいろな症状を見て人は上を向きながら驚くが、実際は足元の土にほとんどの原因があるそうだ。体の元を作るのは栄養。それを摂取する機能はなによりも大事だ。そのあたりは同じ生き物である人も木も一緒のようだ。

ツリークライミング保護
 根に必要なのは水だけではない。水が抜けてそこに空気が入り、その空気の層にまた水が溜まり摂取する、そのサイクルとバランスが大事である。
 人の活動は土を踏み固めて層を潰し、根の理想とするサイクルとバランスを狂わせる。その環境を改善させるための処置方法を教わった。上の写真は土にドリルで穴を空け、空気の層を新たに作成しようとしているところの様子。

ツリークライミングツリークライミング2
 この穴に籾殻燻炭を入れる。籾殻燻炭には他の炭同様、細かい穴が無数に開いており、毛細根の活動を助ける。このスペースが根の周りの水と空気のバランスを整えてくれる。

籾殻燻炭
 たねのもりのメンバーも実際にやってみる。いろいろな深さに穴を空け、講師のアドバイスをいただいた。人が歩いて固める深さは約20センチ程度。本来そこがケアされていればいいのだが、根が活発に働く深さはもう少し深い30センチ~40センチのところなので、その深さの環境改善を行なうことで、根の働きを助けてあげられる。

つりーくらいみんぐ
 空いた穴にたっぷりと籾殻燻炭を入れる。この炭の微細な穴が根の水と空気のバランスを整えるのだ。これだけでもずいぶんと根の周りの環境改善になるが、それよりも大事なことは土全体が柔らかくなること。つまり人間の活動による悪影響をリセットしてあげることだ。

ツリークライマー樹木医
 千葉の樹木医武田さん。無口だが笑顔が絶えない温かい人柄の方だ。やはり同じように木が大好きで、木のことになると感情が先走り、気持ちに口が追いつかないほどの思い入れが伝わってくる。樹木医としての活動やツリークライミングだけでなく、森での幼稚園児とのふれあいなど、多彩な活動もしており、木と人との関わりに深い興味があるそうだ。
ツリークライミング千葉
 しろの地主さん木下さんと樹木医石橋さん。石橋さんも熱い樹木医。石橋さんの持つ情熱は「木のために何かをしたい」という気持ちにさせることができる情熱だ。
 今回の研修では、津波の影響で立ち枯れた木の再生の話しを聞かせていただいた。「人間の思い込みでは、分からないことだらけ」という石橋さんの話には、木の持つ、長い時間軸に寄り添ったまったく別の視点を感じる。生き物に対する畏怖の気持ちがあり、その不思議さを自然に受容しているからだろう。

ツリークライミング仲間
 千葉の皆さんのおかげで、とても有意義な時間を過ごすことが出来た。このような活動を通して、自分達たねのもりの活動だけでなくツリークライマーみんなが力をあわせて、樹木をよみがえらせることができると、森にとって良い人間になることが出来る。
 森を使う資格の根本は、森を良くしてあげる気持ちを持ち、準じた活動が出来ることだ。森と共生するために、森を守るために、まず人間の側に必要なものは、やはり森や樹木、生き物に対する愛情のようだ。
<写真 若林 勇人  文 柴山 利幸(環境教育ネットワークたねのもり)>

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